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中小企業庁が異例の名指し、公表 芝浦機械など15社に最低評価 問われる“支払いの倫理

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中小企業庁が15社を最低評価、支払い慣行にメス

中小企業庁は、発注企業の代金支払い対応に関する調査結果を公表し、シャトレーゼ、三菱鉛筆、芝浦機械など15社を最低評価とし、社名を公表しました。問題視されたのは、支払いが60日超の手形によるもので、さらに割引料を下請けに負担させていた点。2026年1月施行の改正下請法では手形払いが禁止されることから、今回の調査は慣習是正への警鐘です。官公需では郡山市と神戸市が価格交渉・転嫁の両面で低評価を受けました。調査は全国30万社に行われ、66,000社の回答をもとに主要取引先446社を評価。支払いの誠実さが、企業の信頼に直結する時代が訪れています。

芝浦機械、最低評価と財務の異常傾向

そんな中、最低評価となった芝浦機械の財務状況にも注目が集まります。企業力総合評価は2023年まで下落傾向にあり、2024年から回復の兆しが見られる一方で、2023年・2024年にはWARNINGが点灯。これは通常の評価とは別に、深刻な経営課題がある場合に表示されるものです。営業効率では2020年まで増収(青棒)に至らず、2021年には大幅な減収を経験。その後増収トレンドに転じ、現場の必死な立て直しが伺えます。

しかし、資産効率のグラフには異様な現実が表れています。2023年・2024年、増収を達成した裏で棚卸資産回転期間(オレンジ)は7ヵ月を超えており、在庫の過剰が疑われます。これがWARNINGの点灯要因と考えられます。一方、売上債権回転期間(黄)は2016年の4.44ヵ月から2025年には1.95ヵ月と短縮化。仕入債務回転期間(青)は2023年に3.5ヵ月でピークを迎え、2024年には2.32ヵ月とやや改善。しかし、全体としては高水準にあります。

仕入先との関係性が問われる時代へ

通常は「売上高 > 売上原価 > 材料費等」の不等式から「売上債権回転期間 > 仕入債務回転期間」が自然な形ですが、芝浦機械ではこれが逆転する期も多く、仕入先への支払いに対する厳しさが露呈しています。

今回の中小企業庁の発表は、同社の信用に少なからず傷をつけました。これからは仕入先を含めたすべてのステークホルダーに対し、誠実かつ公正な経営姿勢が強く求められます。

250806芝浦機械企業力総合評価・営業効率・資産効率財務指標数値
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山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
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