日経ニュースで話題の企業を財務分析

数字では測れない“復活の余地”:フジ・メディアHDの現在地とこれから

Facebook
X
Email
Print
目次

変革の幕開けとなった株主総会

2025年6月25日、有明アリーナに3,364人が詰めかけたフジ・メディア・ホールディングスの第84回定時株主総会は、まさに「変革の幕開け」を象徴する瞬間でした。

経営陣が提案した新体制、清水賢治氏を含む11名の取締役案はいずれも80%超の賛成で承認。独立社外取締役が過半数、女性比率は45%にまで上昇し、平均年齢も若返るなど、時代の要請に応えるガバナンス体制が整いました。

一方で、米ダルトン・インベストメンツが擁立した12名の対立候補は、最高でも27%の支持率に留まり、すべて否決。昨年の20倍以上という出席者数が示すように、株主の注目度と期待はかつてないほど高まっています。

信頼回復に向けた歩みとその背景

この変革の背景には、第三者委員会による性加害問題の「業務延長」認定があります。企業の信頼を大きく損ねたこの問題を経て、フジ・メディア・ホールディングスは今、全社を挙げて信頼回復と再建への道を歩み始めました。

財務の現状と企業力の低下

一方で、財務面の現実は厳しい。企業力総合評価は前年の162ポイントから145ポイントへと17ポイントの下落。現在のペースで悪化が進めば、5.2年後には破綻懸念の水準である60ポイントを割り込む危険性もあります。

250701フジ・メディア・ホールディングス企業力総合評価
250701フジ・メディア・ホールディングス企業力総合評価

営業効率と希望の兆し

それでも、希望の光は消えていません。売上高はわずか2.8%の減少にとどまり、営業利益は売上高総利益率の低下を販売管理費の抑制でカバー。さらに、経常利益率が営業利益率を上回っており、財務が営業を支える構造が見て取れます。

250701フジ・メディア・ホールディングス営業効率財務指標数値
250701フジ・メディア・ホールディングス営業効率財務指標数値

確かに、特別損失により2025年は約2,000億円の最終赤字となりました。

復活の余地を残す財務基盤

しかし、総資産に占める金融資産比率は30%、総資産の半分以上が純資産というBSバランスを考えれば、「復活の余力」は依然として十分に残されていると言えるでしょう。

250701フジ・メディア・ホールディングス総資産金融資産比率
250701フジ・メディア・ホールディングス総資産金融資産比率
250701フジ・メディア・ホールディングスBSバランス
250701フジ・メディア・ホールディングスBSバランス

数字を超えた企業姿勢の重要性

企業としての姿勢が問われる今、私たちはただ数字を追うのではなく、真摯な改革の歩みに注目すべき時です。
不祥事の痛ましさを忘れず、被害に遭われた社員の方々の心の平穏と未来に、心からの祈りを込めて──。

■この企業の最新の分析はこちら → https://bm.sp-21.com/detail/E04329

■この分析をブログで読む→https://bm.sp-21.com/blog/E04329-fujimedia-20251107/

Facebook
X
Email
Print
Picture of 山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
Picture of 山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
関連記事

コロワイドの「再生請負人」としての手腕が、ここまで鮮やかに表れるとは──。 コロワイド傘下で大戸屋が見せたV字回復 大戸屋HDは、2020年11月にコロワイド傘下に入って以降、業績のV字回復を遂げています。「大戸屋ごはん […]

大王製紙が、トイレットペーパーの“長尺化”で攻勢をかけている。 買いだめ需要が起点だった長尺品市場は、いまや「タイパ」志向の若年層にも支持され、2024年には744億円市場にまで成長。2017年比で約4.2倍だ。背景には […]

伊藤忠商事の セブン銀行への出資は、「単なるATMの置き換え」にはとどまりません。 それは、流通と金融が交差する未来を見据えた、本格的な戦略投資です。 ATM刷新による金融インフラ統合戦略 同社は、傘下のファミリーマート […]

M&Aを次々に打ち出し、クラウド会計の覇者として注目を集める freee。 時価総額は前年比+754億円(+46%)と急伸しましたが、財務の視点から見れば、まったく異なる景色が浮かび上がります。 営業効率は改善せ […]