カーライルによるホギメディカル買収の概要
米投資ファンドのカーライル・グループが、手術用品メーカーのホギメディカルをTOB(株式公開買い付け)により買収する方針を固めた。買収額は約1,500億円規模で、成立すれば同社は非公開化される見通しだ。
カーライルはグローバルにヘルスケア領域への投資を強化しており、これまでに累計230億ドル超を投資。2024年には日本市場に特化した4,300億円規模の大型ファンドも設立している。今回のホギメディカル買収も、こうした戦略の延長線上にある。
ホギメディカルは、国内市場の成長鈍化を背景に海外展開を加速している。カーライルの持つ経営人材・医療業界のノウハウを活用することで、販売体制の再構築や新製品開発、製品の高付加価値化を図り、企業価値の向上を目指す。
なお、筆頭株主は米ダルトン・インベストメンツで、2024年6月時点の共同保有比率は26.4%。同社CIOのローゼンワルド氏はホギメディカルの社外取締役として経営に関与しており、これまでも「あらゆる選択肢の検討」を経営陣に促していた。
ホギメディカルの財務構造と安全性
ホギメディカルの企業力総合評価成長に関連のある指標を統合し、企業の成長を表したグラフ。
詳しくはこちらは160ポイント台で推移しており、緩やかな悪化傾向がみられる。とはいえ、財務体質そのものは極めて健全だ。
現金預金(青面グラフ)は流動負債1年以内に返済予定の負債の合計額(単位:百万円)
詳しくはこちら(赤線)を大きく上回っており、2025年時点の現金預金比率現金預金÷流動負債合計×100(単位:%)
詳しくはこちらは211.97%に達する。キャッシュリッチな状態であり、安全性潰れにくさや長期資金繰りについての統合指標。
詳しくはこちら・流動性短期資金繰りについての統合指標。
詳しくはこちらの観点では申し分ない。
営業効率と生産効率の課題
一方で課題となるのは、営業効率「儲かるか」を示す統合指標。
詳しくはこちら・生産効率人の活用度を評価する財務指標の統合指標。
詳しくはこちらといった「稼ぐ力」の部分である。
営業効率の悪化と売上総利益率の低下
売上高(青棒)は堅調で、増収トレンドは維持されているものの、売上総利益率(オレンジ線)は減少傾向が顕著だ。
具体的には:
2016年:48.08%
2025年:32.25%
と、9年間で15.83ポイント低下しており、製造業としては高水準を保っているとはいえ、この推移は懸念材料である。
仮に2025年も2016年と同等の利益率を維持できていた場合、売上総利益は12,622百万円増加した可能性がある。これは、営業効率の低下が企業価値を直接押し下げている証左といえるだろう。
生産効率の変化と人員戦略
生産効率に関しては以下のような動きが確認される。
従業員数(青棒)は2021年を除き、2016年の2,189人から2025年には1,871人へと14.5%減少
一方、1人あたり売上高売上高÷総従業員数÷1000(単位:千円)
詳しくはこちら(オレンジ線)は増加傾向を維持
ただし、1人あたり売上総利益売上総利益÷総従業員数÷1000(単位:千円)
詳しくはこちら(黄線)と1人あたり経常利益経常利益÷総従業員数÷1000(単位:千円)
詳しくはこちら(緑線)は悪化傾向
減員を通じて効率を上げる経営努力は伺えるが、同時に企業活力の低下を招くリスクも内包している。
ビンテージ率と設備投資の抑制
ビンテージ率(減価償却累計額 ÷ 土地を除く土地を除く有形固定資産建物・機械設備・土地など有形資産の合計額。
詳しくはこちら取得原価)は、
2016年:52.38%
2025年:70.32%
へと上昇しており、設備更新の停滞が鮮明だ。縮小傾向が設備投資に現れており、これは企業が守りの姿勢に入り、積極的な成長投資を控えている兆候と捉えられる。
また、貸借対照表(BS)の推移からは、固定資産企業が長期に保有する資産の合計額(単位:百万円)
詳しくはこちら(水色)の減少、総資産の縮小が読み取れる。流動性は高く、純資産資産から負債を差し引いたもので、ネット資産とも呼ばれる。
詳しくはこちら(緑)も厚いが、消極的な経営が継続していると見ることもできる。
カーライルが狙う企業の特徴と今後の焦点
カーライルによる今回の買収は、「財務体質が良く、経営の再設計次第で高収益化が可能」という典型的な投資パターンと一致する。
過去にカーライル傘下に入ったツバキ・ナカシマは、財務の質が毀損されたまま再上場を果たした事例もある。
参考記事:ツバキ・ナカシマMBOの結末
ホギメディカルも同様に、今後の経営方針次第で「キャッシュリッチだが利益が縮小する企業」からの脱却ができるかが問われるフェーズに入っている。
■この企業の最新の分析はこちら → https://bm.sp-21.com/detail/E02315
※本記事に掲載された図表・グラフはすべて、企業力Benchmarker(株式会社SPLENDID21)による分析結果に基づいて作成されています。
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