コロワイドの「再生請負人」としての手腕が、ここまで鮮やかに表れるとは──。
コロワイド傘下で大戸屋が見せたV字回復
大戸屋HDは、2020年11月にコロワイド傘下に入って以降、業績のV字回復を遂げています。「大戸屋ごはん処」の既存店売上高は2021年11月から48カ月連続で前年比を上回り、2026年3月期には売上高・営業利益ともに過去最高を見込むまでになりました。
メニューとオペレーションの大胆な見直し
回復の鍵となったのは、経営方針の大胆な転換。従来の「こだわり重視」のメニュー構成から、男性客を意識したボリューム感ある定食へと回帰。また、セントラルキッチンの活用による提供時間の短縮が、回転率と顧客満足度を高めました。
「こだわり」の維持と「攻め」の戦略の両立
一方で、国産中心の食材という「こだわり」も維持。その上で、グループシナジーを活かした共同調達や、欧州・中東への海外展開といった「攻め」の姿勢も強化しています。物価高のなか、安易な値上げに頼らず、収益性向上とコスト削減の両立が今後の課題です。
財務指標に反映された業績回復
このような施策が、財務指標にも如実に現れています。
企業力総合評価成長に関連のある指標を統合し、企業の成長を表したグラフ。
詳しく見るでは、2021年3月期に63ポイント(破綻懸念水準ギリギリ)だったものが、2024年には143ポイントまで上昇。まさに見事なV字回復です。
営業効率の飛躍的な改善
営業効率「儲かるか」を示す統合指標。
詳しく見る親指標も、赤色ゾーンの底から青色ゾーンの天井値まで上昇。特に2023年の売上高(青棒グラフ)は23,846百万円と、コロワイド買収前と同水準に戻ったタイミングで、営業効率親指標が大きく改善。その後、売上高総利益率売上総利益÷売上高×100(単位:%)
詳しく見る(オレンジ折れ線グラフ)の改善に加え、売上高販売費及び一般管理費比率(黄折れ線グラフ)も低下し、結果として売上高営業利益率営業利益÷売上高×100(単位:%)
詳しく見る(青折れ線グラフ)が-20.72%から5.29%へと上昇していきます。
生産性の向上と人材活用の最適化
冒頭で述べた男性客向けメニューや調理効率化の成果が、収益構造にまで反映されてきたことが伺えます。
さらに生産効率人の活用度を評価する財務指標の統合指標。
詳しく見る財務指標に目を向けると、従業員数(青棒グラフ)を増加させつつも、1人当たり売上高売上高÷総従業員数÷1000(単位:千円)
詳しく見る(オレンジ折れ線グラフ)は9,186千円から14,214千円、1人当たり売上高総利益(黄折れ線グラフ)は5,046千円から8,275千円、1人当たり経常利益経常利益÷総従業員数÷1000(単位:千円)
詳しく見る(緑折れ線グラフ)は-1,917千円から780千円と上昇基調にあることも確認できます。
経営思想の転換が導いた本質的成長
大戸屋はかつて、女性客に支持された「こだわりの定食」で2019年以前の安定を築きましたが、その間に売上・利益の成長は見られませんでした。経営者交代後、「こだわり」と「効率」のバランスを是正した結果、業績は急改善。これは単なる回復ではなく、企業体質の転換と言えるでしょう。
「理念」と「合理性」の両立を成し遂げた、数少ない成功事例として注目に値します。
■この企業の最新の分析はこちら → https://bm.sp-21.com/detail/E03380
※本記事に掲載された図表・グラフはすべて、企業力Benchmarker(株式会社SPLENDID21)による分析結果に基づいて作成されています。
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