USスチール買収で変貌する日本製鉄の未来
歴史的な一手が、いよいよ現実のものとなりました。日本製鉄によるUSスチールの買収が正式決定。買収額は141億ドル(約2兆円)にのぼり、さらにアメリカ政府が「黄金株(ゴールデンシェア)」を保有する形で、110億ドル(約1兆5800億円)の追加投資が条件として課されました。
この買収により、直後のバランスシートには大きな変化が生じます。日本製鉄がこの9年間で積み上げてきた資産増加とほぼ同規模のインパクトを一度に受ける形で、総資産は大幅に膨張。鉄鋼業界における“巨人”である同社にとっても、今回のディールがいかに大きな買い物であるかがうかがえます。今後は、追加投資分の反映により、企業規模の拡大と同時に責任とリスクも一層高まっていくことになります。
経営の自由度を左右する「黄金株」の影響
なかでも注視すべきは、米国政府が保有する「黄金株」の存在です。この株式は経営上の特定事項に対して拒否権を持ち、通常の出資とは異なる政治的・戦略的な意味合いを帯びています。経営判断の合理性や迅速性が問われる中、日本製鉄がどこまで自由な意思決定を維持できるのか。地政学リスクと産業保護政策の板挟みとなる中で、企業としての主導権のあり方が問われる場面は、今後増えていくことでしょう。
とはいえ、この交渉過程で日本製鉄が示した粘り強さと戦略眼は、投資家・業界関係者から高く評価されています。財務的リスクを抱えつつも果敢に挑む姿勢は、同社が単なる“原材料供給者”から脱却し、世界的競争軸の中核へと躍進しようとする意志の表れといえます。
これは単なる買収ではなく、新たな時代への挑戦の幕開けです。USS買収後の財務前提は以下のとおり:日本製鉄(2024年3月期)・USスチール(2024年12月期)の財務諸表を基に、買収構成は25%増資、75%固定負債と想定されています。
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