株主に否決された元社長が経営に残留
太陽ホールディングスでは、佐藤英志前社長が株主総会で取締役再任を否決されたにもかかわらず、医療・医薬品部門の責任者として上席専務執行役員に就任し、経営に残留するという異例の対応が取られました。
これに対し、大株主であるDICやオアシス・マネジメント、創業家からは強い反発が起きています。特にオアシスは「株主の意思を無視している」と厳しく非難し、コーポレートガバナンスの改善提案を検討する構えを見せています。
医薬事業の赤字とガバナンスのねじれ
医療・医薬品事業は佐藤氏が主導して立ち上げたものの、近年は赤字が続いており、株主からは「企業価値を棄損している」との批判が高まっていました。社長交代により統治刷新への期待が膨らんだ矢先、実質的に影響力を維持した形での経営残留は、経営の透明性に疑問符を投げかける結果となりました。
財務データから見る太陽HDの実力
とはいえ、数字が語る実力は別の姿を示しています。2025年3月期の財務データを基に企業の実態を読み解くと、次のような構図が見えてきます。
企業力総合評価は過去10年で最大の回復
149ポイントから170ポイントへと21ポイントの急回復。過去10年にわたり一進一退を繰り返してきましたが、悪化の翌期には必ず反発する「九十九折りの成長曲線」が続いており、粘り強い経営努力が伺えます。
営業効率:売上・粗利・利益率ともに堅調
売上成長(青棒)が明確に回復基調
粗利益率(オレンジ折れ線)も堅調に上昇
販管費比率(黄折れ線)の適切なコントロールにより
→ 営業利益率(青折れ線)は18.54%と製造業として高水準を維持。
生産効率の改善も顕著
従業員数(青棒)は着実に増加
同時に1人あたり売上高(オレンジ折れ線)も上昇
→ 生産性向上が定量的に示されています。
バランスシートの安定性と成長投資
安定した財務基盤を維持しつつ、攻めの投資姿勢も崩さず、将来の成長を見据えた資本配分がなされています。
評価すべきは統治か実力か
これらの点から、財務データで見る限り、太陽HDの実力と経営陣の手腕は一定の評価に値するといえます。むしろ、ガバナンス上の“ねじれ”が企業価値を損なうリスクの方が大きいのではないか──という視点もまた、無視できません。
今後、経営と株主との対話がどのように進展していくか。中長期での企業価値向上に向け、慎重な舵取りが求められる局面です。
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