日経ニュースで話題の企業を財務分析

蓄えた10年、動き出す未来──花王がテキサスに託すグローバル戦略の核心

Facebook
X
Email
Print
目次

花王、米テキサス州に新工場を稼働 現地開発で供給網を最適化

米テキサス州で、花王は9月に三級アミンの新工場を稼働させます。現地企業と高付加価値製品を共同開発し、関税リスクや輸送コスト・CO₂排出を抑えたサステナブルで競争力ある供給網を構築。データセンター向け防錆剤など新たな需要にも対応し、米国シェアを5割から6割へ、世界シェアを35%から40%へと引き上げを狙います。ケミカル事業を成長の柱に据え、2027年には海外売上8,000億円超を目指す構えです。

財務面で見る花王の持ち直しと成長余力

財務の面では、2023年まで企業力総合評価が悪化したものの、2024年に持ち直し。要因は営業効率の低下(過去は天井圏)と、その後の回復にあります。売上高は横ばい(青棒)ながら、売上高総利益率(オレンジ線)は悪化。一方、生産効率は上昇。従業員数(青棒)を絞りながら一人当たり売上高を維持し、成長させています。企業力操業評価が高いのは、財務体質の良さゆえ。成長が目立ちにくい10年でしたが、逆に言えば成長余力を蓄えてきた10年とも言えます。

花王の挑戦が示す未来志向の経営

花王の挑戦から目が離せません。

250826花王企業力総合評価営業・生産効率財務指標・数値
Facebook
X
Email
Print
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
山本 純子
山本 純子
株式会社SPLENDID21 代表取締役。企業評価・経営者評価のスペシャリスト。 多変量解析企業力総合評価「SPLENDID21」というシステムにより、通常の財務分析ではできなかった経営全体を「見える化」するシステムを提供。 近年では様々な企業が本手法を利用して莫大なデータより有用な情報を引き出し、実際の経営に役立てています。 代表者プロフィールはこちら
関連記事

ニデックの決算に走った衝撃 成長の代償——ニデック“監査意見不表明”に潜む財務の真実 ニデックに走った衝撃——。2025年3月期決算で、監査法人から「監査意見不表明」という極めて異例な判断が下された。信頼こそが命の上場企 […]

日本特殊陶業、デンソーから事業買収で世界シェア6割へ 2025年9月、日本特殊陶業がデンソーからスパークプラグおよび排ガス用センサー事業を1806億円で買収することに正式合意。この一手により、自動車プラグ分野で世界シェア […]

富士通とNVIDIAの戦略提携は歴史的な一手 「AIで駆動する社会の実現」へ――富士通が米NVIDIAとの戦略提携を発表したこのニュースは、単なる技術提携ではありません。これは、日本企業が世界のAI競争の最前線へと踏み出 […]

2025年、日本企業を襲う「早期退職1万人超」の衝撃 2025年、日本企業に異変が起きています。 早期退職者がすでに1万人を突破。 この数字、何を意味しているのでしょうか? 特に製造業で目立つのが、管理職世代の大量削減。 […]