医療・水素分野への技術転用と挑戦
SCREENホールディングスの後藤正人社長は、あるインタビューでこう語った。
「半導体製造装置で得た技術を、医療や水素といった未来分野に応用したい」
その言葉どおり、同社は画像処理や印刷技術といったコア技術を生かし、生細胞の観察装置や錠剤向けインクジェット印刷機を開発。がんの個別化医療にも挑戦しており、医療機器は参入しやすい地域から世界市場に向けて展開を始めている。
一方、水素エネルギー事業は政策の変動で一時的に停滞しているが、「政策は必ず見直される」として研究開発を続行中だ。
中国依存の懸念と財務的裏付け
株価が伸び悩む要因として、中国向け売上の比率の高さが指摘される。しかし同社は、中国依存が低下しても収益性への影響が軽微であることを財務数値で証明し、3D化や材料変化といった技術的転換点を確実に捉えることで、企業価値の一層の向上を狙う。
財務面からも、その姿勢は裏付けられる。
企業力総合評価と営業効率の回復
企業力総合評価成長に関連のある指標を統合し、企業の成長を表したグラフ。
詳しく見るはコロナ禍後に回復基調となり、167ポイントと「優良企業」水準に到達。特筆すべきは、資産効率資産の活用度についての統合指標
詳しく見る以外の全ての評価項目が改善に寄与している点である。
営業効率「儲かるか」を示す統合指標。
詳しく見るの親指標は、コロナ禍の2020年に落ち込んだが、翌2021年には回復に転じ、2022年からは天井感を示している。
粗利率・売上成長と経営戦略の成果
中でも注目すべきは、2022年以降の急激な増収(青棒)と、2021年からの売上高総利益率売上総利益÷売上高×100(単位:%)
詳しく見る(オレンジ線)の急改善。2020年の落ち込みを機に、まず粗利率を改善し、その後に売上を伸ばすという堅実な経営が功を奏した。
この間、売上高販売費及び一般管理費比率も着実に改善しており、結果として売上高営業利益率営業利益÷売上高×100(単位:%)
詳しく見る(青線)・売上高経常利益率経常利益÷売上高×100(単位:%)
詳しく見る(緑線)・売上高当期利益率(紺線)のいずれも上昇トレンドにある。
特に売上高営業利益率(青線)と売上高経常利益率(緑線)がほぼ重なって推移している点は、同社が本業にしっかり資金を投下し、安定した収益構造を築いていることを物語る。
人材活用と生産効率の向上
生産効率人の活用度を評価する財務指標の統合指標。
詳しく見る財務指標・数値のグラフを見ると、コロナ禍を除けば、増員(青棒)の中で1人当たり売上高売上高÷総従業員数÷1000(単位:千円)
詳しく見る(オレンジ線)・1人当たり売上総利益売上総利益÷総従業員数÷1000(単位:千円)
詳しく見る(黄線)・1人当たり経常利益経常利益÷総従業員数÷1000(単位:千円)
詳しく見る(緑線)が伸びており、人材活用とその支援体制がうまく機能している様子がうかがえる。
財務健全性と今後の市場評価
バランスシートに目を向けると、増収に応じて流動資産(青)が拡大し総資産が増加しているものの、固定資産企業が長期に保有する資産の合計額。
詳しく見る(水色)の増加は限定的。純資産資産から負債を差し引いたもので、ネット資産金額。
詳しく見る(緑)も潤沢で、長期の資金繰りに課題は見当たらない。
こうした財務の裏付けがあるからこそ、後藤社長の戦略的ビジョンにも説得力がある。
同社がこれから必要とするのは、「市場に気づいてもらう努力」――。
その言葉どおり、事業の多様化と財務の健全性の両輪を武器に、今後の株価上昇は“静かなる確信”と言えるだろう。
※本記事に掲載された図表・グラフはすべて、企業力Benchmarker(株式会社SPLENDID21)による分析結果に基づいて作成されています。
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